注文が殺到するクッキーショップオーナー桜林直子の生き方に学ぶ~人生を楽しむ達人たち その1~
ネット販売で注文が殺到しているクッキーショップSAC about cookies(サクアバウトクッキーズ)のオーナー桜林直子さんのユニークな生き方が注目を集めています。不機嫌になることはあってもそれを絶対に顔に出さないと決めたシングルマザーの生き方は、あまりに潔く、他人からはカッコよく見えますが、決して望んで決めた生き方ではないと語っています。3組に1組が離婚するとされる現代にあって桜林さんの生き方はとても示唆に富んでいます。
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シングルマザーが娘にしてきたことは自分を知ることのスパルタ教育だった
桜林直子さん、東京都出身の38歳、シングルマザーで中学3年生の娘が一人います。
桜林さんはメディアが注目している、注文が殺到するクッキーショップSAC about cookies(サクアバウトクッキーズ)のオーナーです。
でもクッキー―屋さんはやりたくてやっているわけではないと彼女はいいます。
彼女は小さい頃から何かに熱中することもなく、やりたいことがない子供でした。
特に深い思いもなく製菓専門学校に入り、卒業後21歳でチョコレートメーカーの社員になります。
お菓子作りに情熱を燃やす同僚社員の中で、事務や経理という裏方の仕事ばかり任されました。
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その当時付き合っていた同僚との間に子供を授かり結婚をしますが、翌年23歳の時に離婚をしてしまいました。
女手一つのシングルマザーとして一人娘を育てる決意をして会社勤めを続けます。
娘が小学校に上がって初めての夏休み、子どもは40日間の夏休みでほとんど家にいるのに、母親の自分はその間3日しか夏休みが取れず、子どもに淋しい思いをさせてしまいました。
これが6年間も続けられない思った直子さんは、
娘と過ごす時間を作りたいし、娘を養うためのお金も稼ぎたい
と思います。
この二つの相反する願いを叶えるために考えに考えた末の結論がクッキー屋さんの開業でした。
最初考えたのはケーキ屋さんでしたが、冷凍庫とかショーケースの準備とか開業前の初期投資(まるまる借金)が1,000万円ほどになってしまい現実的ではありませんでした。
クッキー屋さんにたどり着くまで、ジャムVSチョコレートとかあらゆるジャンルのお菓子を戦わせて一番現実的だったものがクッキー屋さんだったのです。
クッキーは常温で良いので、テーブルさえあれば商品を並べられるし、お菓子の中では賞味期限が長いので、全国どこでも宅急便で送れると言う利点があったのです。
クッキー屋さんに決めた当時は、これだーっ!というアゲアゲの気持ではなく、どちらかと言えばしょんぼりした気持で、しょうがないかあ、これしかないかあと言う感じでいました。
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2011年10月、直子さんは、東京都渋谷区富ヶ谷の閑静な住宅街の中に、わずか7坪の小さなクッキーショップ、SAC about cookies(サクアバウトクッキーズ)をひっそりと開業したのです。
お店に入るとそこには食べることをためらってしまうような可愛いクッキーが並べられています。
売り上げは店頭よりネットでの注文の方が多いのですが、それは最初から直子さんが狙っていたことでした。
街中の小さな店舗で近隣の馴染み客だけをターゲットにするより、ネットで全国の潜在的な顧客をターゲットにする方が売り上げは上がるはずと考えたのです。
そのためには美味しいことは勿論だが、写真ひとつで買いたいと思ってもらえるビジュアルのクッキーでなくてはならないと決めていました。
女の子が箱を開けたら、可愛いっ!てニコニコ笑ってくれるようなクッキー
ちょっと厳つ目な男性や真面目な男性がこんな可愛いクッキーをプレゼントしてくれたら”可愛いっ!”てモテてしまうようなクッキー
を目指したのです。
直子さんは、
美味しいクッキーはほかにも山ほどありますけど、モテるクッキーはなかなかない。だから美味しいだけでなくモテるクッキーを作ると決めました。
美味しいものが好きっていうよりも、雑貨とか可愛いものをつい買ってしまうというような人に寄せて作ろうと思った
もちろん食べておいしいっていうのは当たり前にやりましたけど、見た目はとても大事にしました。
とその時の思いを語っています。
彼女の狙いは見事に当たって、SACには注文が殺到します。
味が良くて、センスもいい、プレゼントにも最適。
遠方から訪ねてくる友人にプレゼントしたい。
とファンは語り、多くのメディアでも取り上げられ、特集が組まれています。
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SACでは彼女自身はクッキーを作ってはいません。
彼女の仕事は受注の管理や、支払いの手続きなどの事務作業で、ほとんどオンライン上で完結する仕事です。
クッキー作りを担当しているのは4人のスタッフです。
そのチーム作りには直子さんのこだわりがあります。
それは夢組と叶え組を組み合わせたチームにすることでした。
夢組とは、やりたいことがある人のこと。
叶え組とは、やりたいことがない人のこと。
やりたいことがある子は、気持ちは強いけれど、やりたいことばかりやるので、他のことでできないことが多い。
でも気持ちが強いから辛くても粘り強く続けてくれる。
一方やりたいことがない子は、やりたいことがある子から、”これをやりたいから、一緒に手伝って!”言われることを凄く喜ぶ。
やりたいことはないけれど、やりがいは求めていて、”あなたがいて助かった”とか”ありがとう”て言われたいのだ。
だからこそやりたいことがある人と、やりたいことがない人を混ぜてチームを作るのが作るのが良いと直子さんはずっと考えていたのです。
決してやりたいことがある人のほうが優れているわけではなく、やりたいことがない人は、自分にやりたいことがなくても、”ほかの人のやりたいことを叶えてあげられる才能を持っている”のだと彼女は言います。
そもそも直子さん自身はやりたいことがない人だと言って笑っています。
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直子さんは実によく歩きます。
歩きながら考えます。
考えて考え抜くために、長い時間歩きます。
歩いている間に仕事の手順を整理したり、次にやるべきことを考えたりします。
昔から不足ばかりの人生だったから沢山考えるようになった、好きなことを選択出来る人生だったら、満たされていた人生だったら、こんなに考えるようにはならなかったと彼女はいいます。
思えばこれまでずっと不自由な人生を歩んできました。
だから娘には不自由な思いはさせまいと頑張って、仕事と育児に全てを捧げた20代を過ごしました。
製菓学校時代からの友人はこう言います。
彼女が不機嫌なところを見たことがない。
たしかにいつも彼女は笑っています。
”不機嫌でいて良いことって、お互いに一つもない。(不機嫌さをあらわにしている人には)空気を悪くしているのをわかってんのか!”って思ってしまうのだそうです。
だから不機嫌は(自分にも他人にも)禁止しています。
不機嫌さをあらわにして、他人を思い通りに動かそうとすることが嫌いなのです。
そういう気持ちは”絶対に汲んでやらない!”っていつも思っています。
”不機嫌ノーカウント!不機嫌禁止がルール”と言って彼女はまた笑います。
直子さんの一日は夜が明けきらぬうちから始まります。
起きてすぐに台所でとりかかるのは茜子ちゃんのお弁当作り。
面倒くさいと言いながら作業を続けます。
20分後にできあがったお弁当は凄いクオリティの高さ。
学校では友だちからは羨ましがられ、先生が写真を撮りにきたこともあります。
完成した御弁当は、スマホで撮影してすぐにインスタグラムにアップします。
彼女がそれを毎日続けるのは、お弁当作りを止めないため。
”どうせやるなら楽しくやる”それが彼女のモットーでもあります。
面倒臭いお弁当作りを楽しむためのインスタグラムなのです。
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彼女の一人娘、桜林茜子(あかね)ちゃんは中学3年生、絵が上手で、”あーちん”というペンネームでプロのイラストレーターとして活躍しています。
中学1年の時からほぼ日刊イトイ新聞に”たべびと”という連載コラムも持っています。
その連載”たべびと”はこちらです。
そんなあーちんを育てた、直子さんのこだわりの子育て論にも注目が集まっています。
最終的に自分がどうあれば幸せかっていうのは、自分にしかわからないことだからそれを他人に決めてもらおうと思わない方が良い、親は子供に大きな影響力を持っているからこそ、子どもの人生を親のせいにしないでほしいとずっと思ってきました。
娘には”自分で考えて自分でどうしたいか言えるようになって!”ってずっと言ってきました。
世の中にどんな仕事があって、どんな生き方があるのかを教えてくれる大人は、直子さんの子ども時代にはいませんでした。
何も考えずに会社員になってしまった自分のようにはなってほしくない、娘には自分で考えて、自分で決めた人生を歩んでほしいと思っています。
”何事についても娘に母のせいとは言わせない!”というのが口癖であり、彼女の信条です。
そんな母親のことを娘は”ウチの親は根本的に変な親”だと評しています。
直子さんは、中学3年生の娘がプロのイラストレーターとして世間に認められつつあることにも、必要以上に関心を示しません。
娘はそれが良かったといいます。
絵を描くことだけ褒められて、”一生懸命やりなさいない”って言われてたらやりたくなくなっていたかもしれない、こういう変わった親で良かったと思ってると‥‥。
直子さんが店頭に顔を出すのは週に1回程度、店では奥の小上がりの座敷のちゃぶ台で作業をします。
自宅では仕事をしません。
家にいるとつい仕事以外のこと(家事ではない)をしてしまうから、と笑います。
他の日は外の喫茶店を巡って、午前中だけ集中して仕事をして午後は友人とおしゃべりしゃりしてすごします。
今は、娘と過す時間も十分にとれるようになっています。
クッキー屋さんを始めるにあたって心に決めたことがいくつかあります。
結婚して共稼ぎしていたころと比べれば、収入も半分、片親になってしまい親と過ごす時間も半分になってしまう。
でもそれをシングルマザーだからっていう風にはしたくないと思い、”人の半分の時間で倍稼ぐ”ことを絶対に叶えると決心しました。
直子さんは現在それを立派に実践しています。
20代に戻れるとしたら?という問いかけには、即座に”絶対にヤダ!死んでもヤダ!”と答えました。
私みたいに、家も土地もんさい、能力も学歴もない、本当に何もない中で生きてきた私が、今は取りあえず何かに困っていることはないという状況になった。
そんな私の今を見てうらやましいなんて言われると、”(本当に辛かった)わたしの20代と代わってやろうか!”と本気で思うといいます。
”今が一番いい、でも来年はきっともっといい”と本当に思っています。
直子さんのユニークな子育てに興味を持ったネットメディア”She is”が連載の仕事をオファーしてきました。
テーマは母と娘。
考え抜いて直子さんが決めた連載のタイトルは”あなたとわたしが、いつまでも自由でいられますように”。
直子さんの願いが込められています。
”She is”での第1回の連載の内容も心を打ちます。
その中で、自分が娘にしてきたことは、”自分と言うものを過不足なく知る”ためのスパルタ教育だったと綴っています。
それはこちらあなたとわたしが、いつまでも自由でいられますようにで読むことができます。
その中の言葉
娘が、これから先たくさんの人に会って世界がひろがっていくときに、世の中にはいろんな人がいるから、相性が悪いことやわかりあえないこともたくさんあるだろう。だけど、自分のことをよく知っていると、自分と相手がちがうことはあたりまえだと自然と理解できて、自分とちがう相手がどんな人なのか知ることができる。わからないことは悪いことではなくて、面白がることができる。自分の考えを大事にできると、相手の考えも大事にすることができる。自分を愛することができると、相手を愛することができる。
を最後に記したいと思います。
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