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お笑い芸人の倫理感とコンプライアンス~吉本興業のブラック企業体質と闇営業は無縁ではない~

エンタメ

芸能界と反社会勢力との高い親和性と近年の警察の取り締まり強化

まだ映画もテレビもなかった時代のエンターテインメントのメインストリームは、お芝居であった。

芝居を演じる役者たちは、一部の人気者を除けば、”河原乞食”と呼ばれ、”堅気”である一般人からは一段低い存在とみなされていた。

そのころには全国各地に大小さまざまな規模の芝居小屋があり、多くの興行を仕切っていたのは、それぞれの地元の今でいうところの反社会勢力であった。

旅回りの一座は、それらの地方興行主に呼ばれて、一定期間その地に滞在して”芝居”を演じるのである。

映画が誕生し、映画が庶民の娯楽の王様になっても、多くの地方の映画館を仕切っていたのはかつての興行主である闇社会のメンバーたちであった。

一方で大都会には、落語や漫才といった笑いを提供する娯楽も存在し、江戸時代に生まれた寄席を拠点として活動を始め、”お笑い”はエンターテインメント界の一大勢力となっていく。

寄席の所有者である席亭は、それぞれの地元の有力者であり、その中にはいわゆる反社会的勢力も含まれていた。

さらに闇社会の実力者たちは、人気役者や、人気落語家たちの”タニマチ”(パトロン=後援者)として、自分たちの財力や、影響力を誇示した。

このように昔からエンターテインメント界の中心には、反社会勢力=闇社会が抜きがたく存在していたのである。

エンターテインメントの世界と闇社会の親和性は非常に高く、そこには長い歴史があった。

エンタメの主流が、映画からラジオへ、そしてテレビへと移っていく中で、役者は俳優と呼ばれ、それぞれ芸能事務所に所属するようになり、落語家や漫才師たちもそれぞれ芸能事務所の支配下に置かれるようになる。

テレビ全盛となり、無料で良質なエンターテインメントが視聴者に提供される時代がくると、地方の芝居興行などは人気を失い、闇社会の資金源としての旨味も小さくなってしまった。

反社会的勢力の”しのぎ”が変化し、薬物取引きなどが一般人にも蔓延していくようになり、闇社会に対する警察の取り締まりは、格段に強化されることになる。

芸能事務所にも警察の指導が日常的に行われるようになり、1991年の暴力団対策法(暴対法)の施行によって、芸能事務所と反社会的勢力との関係が発覚すれば、マスコミのバッシングの対象となり、会社そのものの存続すら危うくなる可能性まで出てきた。

そんな中で、お笑い事務所最大手の”吉本興業”所属の人気芸人による反社会勢力が主催するイベントへの、”闇営業”出演が発覚する。

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カラテカ・入江慎也契約解除、雨上がり決死隊・宮迫博之ら11人は無期限謹慎へ

(文中敬称略)

事件は、6月7日発売の写真誌フライデーの記事によって発覚した。

記事によれば、2014年12月に吉本興業所属のお笑い芸人カラテカの入江慎也の仲介によって、同じ吉本所属の人気芸人宮迫博之や田村亮ら11人が、振り込め詐欺グループが主催する忘年会に、いわゆる”闇営業”の形で出演していたという。

この記事の早刷りを確認した吉本興業は、入江慎也を事件の首謀者とみなし、6月4日付で早々と契約を解除した。

一方で、宮迫らの出演者には、聞き取りを重ねながら、当初は厳重注意処分ですませるつもりであったようだ。

宮迫らが、そのイベントが詐欺グループが関係するものだとは知らなかった、ギャラは受け取っていないと語った証言を信じたからである。

ところが、フライデーは翌週の後追い記事で、宮迫らが事件の半年前の2014年6月にも、同グループが主催する、詐欺グループ幹部の誕生会に出席していて、ギャラも受け取っていたと報じる。

2019年6月21日のフライデーdigitalの記事からの引用


今回本誌が入手した1枚の写真(上写真)に写っているのは、吉本の人気芸人たちだ。

言わずもがな、この写真は仲間内の飲み会で撮られたものではない。本誌はすでに、’14年12月に開かれた大規模詐欺グループの忘年会に『雨上がり決死隊』宮迫博之らが出席していたことを詳報している。この写真はその忘年会の約半年前、’14年6月頃に開かれた、同じ詐欺グループの、しかも首謀者の誕生会で撮られたものだ。

本誌はこの誕生会に出席した詐欺グループ元メンバーに接触した。この元メンバーは、グループが資金流用のために経営していたダミー会社を手伝っており、首謀者を含む幹部とも極めて親しかった人物だ。元メンバーはこう語った。

「首謀者の誕生会だけあり、都内のレストランを貸し切りにして、詐欺グループのメンバー100人以上が出席しました。忘年会のときは、芸人たちは会の最後にサプライズで登場しましたが、誕生会には最初から出席していた。写真に写っている芸人たちが、順番に詐欺集団に向かってネタを披露していました。

司会はやっぱり入江。首謀者や幹部たちのことを『若手実業家』と言ってメチャクチャ持ち上げていました。芸人はそれぞれ持ちネタを披露してそれなりにウケていましたけど、爆笑をさらったのが『ザ・パンチ』の二人。『ヤンチャな人たちがいっぱいいますね』みたいなことを言っていました。なにしろ、詐欺のメンバーは20代が多く、入れ墨が入った奴も大勢いましたからね。危ない奴らのパーティだと気づいていたんでしょう」

本誌前号で「闇営業」を報じた後、参加した芸人たちは一様に「ギャラはもらっていなかった」と言い訳を繰り返した。しかし、この元メンバーは「絶対に支払っていた」と断言する。

「忘年会同様、誕生会に芸人を呼んだのも入江です。入江には仲介料として100万円以上を支払った。意外かもしれませんが、ギャラは手渡しではなく、振り込みでした。詐欺グループが経営していたダミー会社から、入江の口座に『宣伝費』とか『出演料』とか適当な名目で振り込むんです。入江の差配で、そのギャラを芸人たちに振り分けたんでしょう」

「闇営業」芸人たちの言い訳はもう一つ。それは、「詐欺グループだとは知らなかった」というものだ。だがこの言い訳も、真っ赤な嘘だ。元メンバーが続ける。

「首謀者の誕生会より以前に、私は少なくとも3度、入江と飲み会で同席したことがあります。六本木や麻布のキャバクラのVIPルームでした。そこにはグループの幹部連中もいて、はっきりと『詐欺で稼いでいる』と口にしていた。それについての入江の返事もちゃんと覚えていますよ。『悪いことしないと稼げないっすもんね』。入江はそう言って笑っていました」

詐欺集団だと知っていた――そう断言できるのは、入江だけではないという。’14年12月の忘年会に参加していた、『ロンブー』田村亮も認識していた。

「首謀者の誕生会の直前、’14年の5月31日に、入江が主催する『AH!YEAH!OH!YEAH!2014』というイベントがあったんですが、そのイベントに詐欺グループは協賛として参加した。もちろん、資金流用のために作った表向きの会社の名前ですけどね。で、そのイベントは新木場のライブスペースで開催されたんですが、会場に用意されたⅤIP席でグループの幹部連中と飲んでいたら、入江と一緒に『ロンブー』の田村亮が挨拶に来たんです。その席でも幹部たちは『詐欺で稼いでいる』とはっきり言い、亮もそれに頷いていました」

入江と田村亮が知っていたとすれば、他の「闇営業」芸人たちにも真相が伝わっていた可能性が高いだろう。事実関係を確認すべく、本誌は改めて所属事務所である吉本興業に詳細な質問書を送った。しかし今回も、「無回答」という対応だった。

吉本興業はこの記事によって、聞き取りに際して宮迫らが嘘の証言をしていたのだと知ったのである。

吉本興業は、事態の深刻さを認識し、6月24日付で、同イベントに闇営業参加した吉本傘下の芸人たちの謹慎処分(当面の活動自粛)と以下の公式声明を発表した。

宮迫博之、田村亮、レイザーラモン HG、福島善成、くまだまさし、パンチ浜崎、木村卓寛、ムーディ勝山、2700、ディエゴに関するご報告とお詫び

弊社所属の雨上がり決死隊・宮迫博之(みやさこひろゆき/49歳)、ロンドンブーツ 1号2号・田村亮(たむらりょう/47歳)、レイザーラモン・HG(住谷正樹・すみたにまさき/43歳)、ガリットチュウ・福島善成(ふくしまよしなり/41歳)、くまだまさし(46歳)、ザ・パンチ・パンチ浜崎(ぱんちはまさき/38歳)、天津・木村卓寛(きむらたくひろ/43歳)、 ムーディ勝山(むーでぃかつやま/39歳)、2700・八十島宏行(やそしまひろゆき/35歳)、2700・常道裕史(つねみちひろし/36歳)、ストロベビー・ディエゴ(41歳)、の11名を、本日をもって、当面の間、活動を停止し、謹慎処分とする旨を決定致しました。

 本件は、5年ほど前に、上記芸人が特殊詐欺グループとされる反社会的勢力主催の会合へ参加していたとするものです。弊社が、複数回にわたり、該当タレントへのヒアリングや各自の記憶の整理、確認を丁寧に行った結果、該当する芸人において、反社会的勢力主催の会合であるとの認識はなく、また、報じられていたような金額ではありませんでしたが、会合への参加により一定の金銭を受領していたことが認められました。

 弊社は、日頃より所属芸人・タレント、及び、社員に向けたコンプライアンス研修を通じ、コンプライアンス遵守や意識の向上を徹底してまいりました。弊社にとって、今回の事実確認結果は、重大な問題であると考え、今回の処分に至り、弊社としてもその責任を痛感するものであります。

 関係各位、ファンのみなさまには多大なるご迷惑をおかけしておりますことを、深くお詫び致しますと共に、今後、所属タレントへのコンプライアンス研修の一層の強化を図り、二度とこのような事態が起こらないよう、全社一丸となって、社内意識の徹底を行ってまいります。

テレビ各局はこれを受けて直ちに当該タレントの〝出演見合わせ〟を発表するとともに、すでに「収録済み番組」をどうするかという対応に追われている。

報道を受けて、テレビ朝日の人気バラエティ番組”アメトーーク!”では、スポンサーがCM出稿を取りやめる事態も起こっている。

11人が出演していて、すでに収録済みの番組では、出演場面をすべてカットする、もしくは画面をトリミングするなどの再編集作業追われ、宮迫がメインMCを務めている”アメトーーク!”では、番組の差し替えや、番組そのものの打ち切りまで検討されている。

宮迫一人だけでも、メディアが受ける損害は数千万円から1億円に達すると見られている。

吉本興業は、これらの賠償請求に応じなければならず、宮迫個人もその何割かは負担することになるのだ。

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追記:スリムクラブ、2700を無期限謹慎処分

2019年6月27日、吉本興業は、スリムクラブの真栄田(まえだ)賢と内間政成、すでに当面の間ながら謹慎処分を受けている2700の八十島宏行と常道裕史の4人を、暴力団関係者の会合に参加したとして、無期限の謹慎処分としたことを発表した。
4人は2016年8月ごろ、別の芸能事務所の芸人から「飲食店オーナーの誕生会」と誘われて漫才の営業に行ったが、それは暴力団幹部が参加するパーティーだった。
吉本興業を通さずに、対価として金銭を受け取っていたという。
4人とも、反社会勢力が参加していた認識はなかったとしている。

スリムクラブが発表した謝罪コメント

スリムクラブ 真栄田賢

ファンの皆様、そして、僕と関係のある人たち全員に申し訳ない気持ちでいっぱいです。申し訳ございません。認識が甘く、このような形になってしまった事は、大変心苦しいです。謹慎して、その間に自分と向き合って、少しでも人の役に立てるよう頑張ります。この度は、誠に申し訳ございませんでした。

スリムクラブ 内間政成

この度は、自分の認識の甘さが原因で、軽率な行動をとってしまい、誠に申し訳ございませんでした。この謹慎で自分と向き合い、自分の生き方を堂々と話せる人間になりたいと思います。本当に申し訳ございませんでした。

この事を受けて吉本興業は、公式サイトに”決意表明”というタイトルの2,000字を超える長文の声明を発表した。

今回の騒動の謝罪と、これまでの同社のコンプライアンスへの取り組みが不十分であったことの反省、そして徹底した調査にによる厳正な処分などが盛り込まれている。

吉本興業の”決意表明”はこちらで読めます。

この会合でのスリムクラブのギャラは、通常営業ギャラ30万の半分である15万だったという。
通常営業でスリムクラブに渡されるギャラは30万のわずか2割の6万である。
闇営業のギャラが半分の15万であっても、二人には2倍以上の実入りがあるのだ。

TVメディアは、わずか15万で、芸人としてのキャリアを一瞬にして失ったと糾弾するが、吉本を介さない仕事は、売れていない芸人や、一度はブレークしたがその後大きな仕事がなくなってしまった一発屋芸人にとっては、大事な生活の糧であったのだ。

ヤバい仕事かもしれないとは思いつつも、背に腹は代えられなかったのだ。

問題の本質は、芸人たちの倫理意識の低さにあるのは明白だが、その原因を作ったのは、吉本興業のマネジメントシステムが、極端に若手芸人たちに不利な状況になっているからである。

彼らをまともな人間として扱っていないからなのだ。

だから芸人たちは、吉本のが世間に発する建前など鼻で笑っていて、簡単に足を踏み外してしまうのである。

仲間の芸人たちが、今回処分された芸人たちに対して、総じて寛容なのは、”明日は我が身”であることと、吉本興業に所属していることの辛さを知っているからである。

これらの事件の真の原因は、吉本興業のブラック体質なのだ。

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宮迫博之らの謝罪コメント

謹慎処分を受けた芸人たちが謝罪のコメントを出した。

雨上がり決死隊・宮迫博之
この度は世間の皆様、関係者の皆様、並びに番組・スポンサーの皆様に大変なご迷惑をおかけし申し訳ございません。そういった場所へ足を運んでしまい、間接的ではありますが、金銭を受領していたことを深く反省しております。相手が反社会勢力だったということは、今回の報道で初めて知ったことであり、断じて繋がっていたという事実はないことはご理解いただきたいです。詐欺集団、そのパーティーに出演し盛り上げている自身の動画を目の当たりにして、情けなく、気づけなかった自身の認識の甘さに反省しかございません。どれぐらいの期間になるか分かりませんが、謹慎という期間を無駄にせず、皆さんのお役に立てる人間になれるよう精進したいと思います。改めて誠に申し訳ございませんでした。

ロンドンブーツ1号2号・田村亮
特殊詐欺グループの開いた会に、私ロンドンブーツ1号2号田村亮が参加した件で、金銭の受け取りがございました。自分の都合のいいように考えてしまい、世間の皆様に虚偽の説明をしてしまった事を謝罪させて頂きます。私を信用してくれていた世間の方々、番組スタッフ、関係者、吉本興業、先輩方、そして淳を裏切ってしまった事は謝っても謝り切れないです。ただ、特殊詐欺グループとは本当に知りませんでした。そこだけは信じて頂きたいです。このような行動をとった自分が恥ずかしくて堪えられないです。謹慎期間を通して、自分を見つめ直し二度とこんな行動をしない人間になるようにします。

レイザーラモンHG
この度は、自分の認識の甘さによる軽率な行動で多くの皆様にご迷惑をおかけしてしまったことを深くお詫び申し上げます。この謹慎でしっかりと自分と向き合い、これからの人生を覚悟を持って生きていきます。申し訳ございませんでした。

ガリットチュウ・福島
5年前とはいえ、反社会勢力と知らず、そこで芸をして出演料を頂きました。そのお金が悪いことをして集められたお金とは知らず、生活費にあてました。報道のような高額ではありませんが受け取ったことは事実ですので、深く反省し二度とこのようなことがないようにします。いつも応援してくださるみなさま、関係者のみなさま、ご迷惑をおかけして本当に申し訳ございませんでした。

くまだまさし
この度は、私の自覚不足、認識の甘さによる行動で、ファンのみなさま、関係者のみなさま、先輩、後輩の芸人、多くの方々にご迷惑をおかけしましたことを心から深くお詫び申し上げたいと思います。深く反省し、二度とこのようなことがないようにします。本当に申し訳ございません。

ザ・パンチ・パンチ浜崎
この度は、関係者のみなさま、先輩、後輩の芸人、多くの方々にご迷惑をおかけしたことを心から深くお詫び申し上げます。大変申し訳ございません。二度とこのようなことがないように致します。

天津・木村
この度は、ファンの皆様・関係者の皆様・日頃お力添えを頂いている皆様にご迷惑をおかけする形となり、本当に申し訳ございませんでした。心より深くお詫び申し上げます。私の認識不足でございました。二度と、このような事がないように深く反省致します。今後は少しでも世の中のためになっていけるように、しっかりと精進していきたいと思います。本当に、申し訳ございませんでした。

ムーディ勝山
この度は、今回の件でご迷惑をお掛けしました皆様、心より深くお詫び申し上げたいと思います。近年地方でも応援してくださっている方がたくさんいる中、自分の認識不足により、このようなことになってしまい本当に申し訳ございませんでした。また精進できるよう、深く反省し二度とこのようなことがないように致します。本当に申し訳ございませんでした。

2700・八十島
今回の謹慎処分を受け、今頭が真っ白の状態です。関係者の皆様、ファンの皆様、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。これからの期間で自分を見つめ直そうと思います。

2700・ツネ
この度は私の認識の甘さ、確認不足によりあってはならない関わりが生じてしまいました。ファンの皆さま、関係者の皆さま、先輩・後輩芸人、多くの方々にご迷惑をおかけしましたことを心から深くお詫び申し上げたいと思います。深く反省し二度とこのような事がないようにします。本当に申し訳ございません。

ストロベビー・ディエゴ
私の認識の甘さから、多くの方々に多大なご迷惑、ご心配をおかけしました。真摯に受け止め、深く反省しております。本当に申し訳ございませんでした。

フライデーの記事では名前が上がらなかった、ワタナベエンタテインメント所属のお笑いコンビ”ザ・ブングル”松尾陽介加藤歩も同イベントに出演していたことがわかり、事務所から当面の謹慎を言い渡され、謝罪コメントを発表した。

「この度は、いつもお世話になっております関係者の皆様、応援してくださっている皆様にご迷惑をおかけし、申し訳ない気持ちでいっぱいです。お世話になっている他事務所の先輩の急なお誘いとはいえ、事務所に相談・報告することなく参加してしまった自身の確認不足、認識の甘さにより、このようなことになり本当に申し訳ございませんでした。相手先が反社会勢力の団体と知らずとはいえ、そのような場に不用意に参加してしまいましたこと、深く反省しております。二度とこのようなことのないようにいたします」

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”取っ払い”と”闇営業”の実態

全国に6,000人、東京地区だけで約1,000人のタレントを擁するお笑い界の巨人”吉本興業”は、その体質の古さと若手へのギャラ配分の低さで広く知られている芸能事務所だ。

NSCという養成所を経営して、そこにお笑い界での成功を夢見る若者を集め教育する。

もちろんNSC自体も授業料を払わせるビジネスとして成立させている。

そこを卒業したものは、無条件に吉本興業に入ることができるのだが、正式に契約書を交わすわけではない。

ただの口約束だけである。

売れ始めて初めて歩合給の契約が結べるようになるのである。

新人でも難波花月などの舞台に立つことはできるのだが、そのギャラは1日数百円であり、それで生計を立てることは不可能である。

親からの仕送りを当てにするか、アルバイトに精を出すか、あるいは先輩に面倒を見てもらうことになる。

そして数年のうちにその多くが夢破れ、脱落していく。

そんな厳しい状況をくぐり抜けた少数の芸人たちだけが、テレビなどのメディアに出演することができるのだ。

そしてやっと貰えたギャラの8割は吉本興業の懐に入り、わずか2割が芸人の取り分になる。

この配分は、人気が上がるにつれて改善され、人気芸人になれば、相場の芸人6:吉本興業4という配分にまで変えることができる。

一方で、後発の事務所である人力舎(おぎやはぎ・オアシズ・アンジャッシュらが所属)では、若手も古参も一律6:4である。

吉本興業が”ブラック”だとされる所以である。

そういう環境の中で、メディア出演の機会が少ないブレーク前の若手芸人の頼みの綱は”営業”である。

ショッピングセンターの販促イベントや、企業の周年パーティや新年会などを華やかにするための余興としてお笑い芸人が呼ばれることは多い。

花月の舞台のギャラが数百円の若手でも、営業でのギャラは万単位に跳ね上がる。

営業を月に何本こなすことができるのかに彼らの生活がかかっているのだ。

芸能界には昔から”取っ払い(とっぱらい)”という、専門用語がある。

”取っ払い(とっぱらい)”とは、事務所を通さない仕事の総称である。

通常の仕事であれば、事務所がオファーを受けて、ギャラの交渉をし、その中からマネジメント料を引いた額がタレントに支払われる。

”取っ払い”では、事務所を介さないことで、事務所のマネジメント料が発生せず、決められたギャラ全額がタレントに渡されることになる。

つまり事務所のマネジメント料が”取っ払われている”のである。

知り合いの伝手などで時折舞い込む”取っ払い”の仕事は、若手芸人にとってはとても”おいしい仕事”なのだ。

知り合いの結婚式や企業の忘年会の余興などが取っ払いで行われることが多い。

テレビ局の現役アナウンサーたちが、知り合いの伝手で結婚式の司会を”取っ払い”で引き受けることも多く、テレビ局も自己申告を前提にそれを黙認している。

取っ払いのギャラは、通常営業のギャラよりは安いことも多いのだが、通常吉本が抜いてしまうマネジメント料が発生しないので、ギャラの全額がそのまま芸人の取り分になるため、手取り額は跳ね上がる。

取っ払いでは、源泉徴収もされないため、事実上の脱税行為でもある。

今回問題になった”闇営業”は、”取っ払い”と同じ意味合いで使われているようだが、わざわざ”闇”と不穏な言葉を用い始めた裏には、それなりの理由がある。

元々、”闇営業”とは、”取っ払い”の中でも、発注元の組織が怪しげなものである仕事のことを指していた。

放送局の社員アナウンサーのアルバイトとしての結婚式などの司会と同様、吉本興業も生活が苦しい若手芸人の”取っ払い”はある程度黙認されていたのだが、それがいつしか”闇営業”というブラックホールに取り込まれていったのである。

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合コン芸人から人脈文化人に進化したカラテカ入江慎也の誤算

そういう中で、合コンセッティング芸人として名前を売り出したカラテカ入江慎也が、その人脈をさらに生かして、人脈芸人として独自のポジションを切り開いていく。

その人脈の中に、詐欺グループがいつしか入りこんでいたのだ。

飲みの誘いは基本断らない入江は、当初、詐欺グループのメンバーとは知らずに付き合っていたのだろう。

その中で、取っ払いのオファーを受け、彼らのイベントに出演し始めたのだ。

後に、彼らの正体が詐欺グループであることを知っても、入江は付き合いをやめようとはしなかった。

それは、詐欺グループのメンバーも自らの正体を知られるようなことは望んではいず、入江もそのことが外部に漏れることはないと高を括っていたからである。

この危機意識の低さには驚かされる。

このグループとずぶずぶの関係になってしまった入江は、ほかの芸人を忘年会に呼びたいという詐欺グループからのオファーを受けてしまう。

まさに”闇営業”である。

この入江の誘いに簡単に乗ってしまった宮迫博之や田村亮の倫理意識の低さにもあきれるばかりだ。

宮迫も亮も、すでに十分に稼いでいる人気芸人である。

わずか100万足らずの金に目が眩んで、これまでコツコツと積み上げてきた芸人としてのキャリアを危険にさらしてしまったのだ。

理解不能である。

一方、初対面の人間の懐にも巧みに入り込む入江のコミュニケーションスキルに世間の注目が集まり出し、入江に対して講演を依頼する企業や団体が増えていく。

それまで不人気芸人入江の副業を黙認してきた吉本興業は、人脈文化人として成功し始め、表舞台に立ち始めた入江を、きちんと処遇して、人気タレントの一人としてきちんとマネジメントすることを決める。

吉本にとって、新たなタレントが誕生したのだ。

仕事量が各段に増えた入江にとっても、吉本がきちんとマネジメントしてくれるというは悪い話ではなく、入江と吉本は新たなwin-winの関係を結びつつあった。

その一方で、メディアの表舞台に立ち始めた入江は、詐欺グループからの飲みの誘いも断りがちになり、彼らとの距離を置き始めた。

それが彼らを怒らせてしまった。

売れていないときは、尻尾を振ってまとわりついてきたのに、売れ始めたら急に手のひらを返すような入江の態度に苛立ってしまったのである。

それが入江の大きな誤算であった。

入江に疎まれ始めたことを悟ったグループの元メンバーが、入江を貶めようとして、入江と詐欺グループとのずぶずぶの関係を写真誌にリークしてしまったのだ。

すでに詐欺グループには警察の捜査の手が及び、彼らには失うものがなくなっていた。

入江にとっては不運だったと言えるのかもしれない。

人脈芸人として独自の立ち位置を切り拓き、表舞台に初めて立った入江は、反社会的勢力とのずぶずぶな関係と闇営業の斡旋をリークされ、一瞬でそのキャリアを失ってしまったのである。

吉本興業の、入江との契約解除の決断はまさに早業であった。

反社会的勢力と自社芸人とのかかわりは、島田紳助氏の引退でもわかる通り、吉本興業にとって問答無用のタブーなのだ。

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宮迫博之や田村亮が嘘をついた理由

吉本興業は今回の闇営業にかかわった芸人たちを当面謹慎処分とすることを発表した。

これが、薬物事案であれば、即刻契約解除となり、芸能界への復帰の目はなくなる。

宮迫や田村亮は、そのイベントが詐欺グループ主催のものだとは知らなかったと現在も主張している。

さらに、ギャラは受取っていないと嘘をついた。

これはおかしな話である。

通常の取っ払い仕事としてイベントに出演し、滞りなくその仕事をこなしたのなら、ギャラを受け取らないという選択はありえない。

取っ払い仕事を受けたことは、吉本興業と当人の間では問題になるかもしれないが、世間的に大きな批判を浴びる事案ではない。

ギャラは受取らなかったとの嘘をついて、何を弁解したかったのか理解しがたいが、おそらくその仕事が、”ギャラを受け取ってはいけない相手が関係している仕事”だと認識していたからである。

つまり反社会的勢力がかかわっているイベントだと理解していたのだ。

さらに、問答無用の入江の解雇を目の当たりにして、次は自分の番かもしれないと怯えてしまい、つい嘘をついてしまった可能性がある。

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宮迫氏の芸能活動復帰の可能性は極めて低い

この事件を取り上げたワイドショーの中で、多くの芸人仲間が、”イベントが詐欺グループ主催のものだとは知らなかった”という主張を受け入れて、同情の余地があると庇っているのも噴飯ものである。

たびたび不倫問題で家族を悲しませ、今回の”闇営業”にもかかわっている宮迫博之氏の倫理意識の低さは尋常ではない。

彼の芸人としての資質や、俳優としての才能は高く評価するが、一人の人間としては問題だらけである。

親族の生活保護受給問題でバッシングに遭った次長課長の河本準一氏は、8年以上も毎月ボランティアで地元・岡山の老人ホーム、幼稚園、介護施設、児童養護施設に訪れている。

宮迫氏も河本氏にならって、謹慎中に何らかの社会貢献活動を始めるべきだと思う。

真摯に社会と向き合い、人間として自分に何が足りないのかを考え続けてもらいたい。

そうでもしなければ、今後彼に芸能界への復帰の目はない。

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