”日向坂46の現在地”～”心地よいマンネリ”が知らぬ間に崩壊していく恐怖、日向坂46の蹉跌/坂道グループの2023年(その3)～

日向坂46の蹉跌　色褪せてしまった日向坂46の物語性

あと1か月あまりで暮れようとしている2023年、秋元康総合プロデューサー系の3つの坂道グループがこれほどはっきり明暗を分けたのはとても意外であった。

世代交代に成功した乃木坂46、海外での活動を契機に新たな道を歩み始めた櫻坂46、その一方でもっとも安定した人気を誇っていたはずの日向坂46がまさかの失速をしてしまう。

2023年の坂道グループの総括であり、彼女たちにとって1年間の”通知表”でもある2023年末のNHK紅白歌合戦には、乃木坂46は9年連続での出場を果たしたが、日向坂46はデビュー以来4年続いていた連続出場が途絶えた。

一方で昨年坂道で坂道グループで唯一落選して悔しい思いをした櫻坂46が見事に復活出場を果たした。

鮮やかに明暗を分けた2023年の３つの坂道グループ。

本稿では日向坂46の2023年の軌跡を辿りながらその現在地を明らかにしてみた。

知らぬ間に忍び寄っていたマンネリの正体

日向坂46の誤算　色褪せた”ハッピーオーラ”と儀式化した”虹色大作戦”

３坂の中で最も箱推しが多く、個々のメンバーの外仕事での活躍もあって、人気が最も安定していると思われていた日向坂46。

そのライブには乃木坂46や櫻坂46のライブにはない多幸感が溢れていた。

アンコールの最後に演奏される楽曲”JOYFUL LOVE”では、”おひさま”(日向坂46ファンの愛称)がペンライトで描く七色の虹が観客席に現れ、メンバーとおひさまとの固い絆を確認することでライブを完結させることが両者の暗黙の了解になっていた。

▼日向坂46のライブ会場に描かれた”七色の虹”(＠横浜アリーナ2020.02.04)

それはメンバーやおひさまにとっての”心地良いマンネリ”として共有されていたはずだった。

だがそれは気付かぬうちに次第に儀式化してしまい、かつては”感動の共有”だったものは安っぽい”感動ポルノ”に変質していき、おひさまたちはいつしか”お腹が一杯”状態になっていた。

失われてしまった”物語性”　見失ってしまった”道標(みちしるべ)”

日向坂のアドバンテージは、グループの生立ちが持っていた”物語性”である。

乃木坂46のパブリックイメージが、”儚さ”、”清楚”、”憧れ”であるように、櫻坂46のパフォーマンスが常に”現代の生き難さへの抵抗”を叫ぶように、日向坂46はグループの歴史が紡ぐ”物語性”がファンを引き付けていたのだ。

しかしその”物語性”は、2022年3月30日・31日に東京ドームで行われた”日向坂46「3周年記念MEMORIAL LIVE 〜3回目のひな誕祭”でひとつの完結をみる。

日向坂46に改名する前の”けやき坂46”時代から、ファンと共に目標に掲げていた場所が”東京ドーム”だった。

東京ドームへの思いを歌っている”約束の卵”という楽曲まであるように、メンバーにもファンにとっても”東京ドームライブ”は念願であり悲願だった。

一度は2020年に開催が決定したもののコロナの影響で延期になり、気持ちが切れてもおかしくない苦しい中でも諦めずに頑張った末での、夢にまで見た約束の彼の地である”東京ドームのライブ”。

それが現実のものとなって、日向坂46の第一章は感動のハッピーエンドを迎えた。

しかしそれは同時に、日向坂46のこれからの活動の道標が失われてしまったことを意味していた。

東京ドーム公演を成功させた日向坂メンバーが次に向かったのは、メンバー個人の活動の充実であった。

キャプテン佐々木久美は、”アイドル界No.1のお笑い好き”という評価を得て、バラエティ番組で数々の御笑い芸人との共演を果たす。

齊藤京子は、キョコロヒー、ソロライブ、地上波ドラマの主演と破竹の快進撃を見せ、佐々木美玲はミュージカルや舞台への出演を重ね、2期生の富田鈴花や松田好花、金村美玖、3期生の上村ひなのらもそれぞれの”好き”を個人仕事に結び付けていき、タレントとしてのポテンシャルの高さを示した。

だがその裏で、グループとしての日向坂46は、東京ドームに代わる目標を見つけることができずに迷走を始めてしまう。

日向坂46の物語性の喪失感は、しだいにファンのモチベーションの低下へと波及していく。

秋元康総合プロデューサーにも同じことが起こっていた。

秋元康流のプロデュースは、対象の中に小さな種を見つけてそれを10にも100にもすることができる。

種が見つからなければ自分は何も起こせない、ゼロをイチにはできないのだと常々語っている。

2ndアルバムのリード曲”君は0から1になれ”は、とても象徴的で、秋元康総合プロデューサーに目には今の日向坂46はゼロの状態であって、プロデュースの種が見つけられていないのである。

空席が目立つようになった地方公演、紅白歌合戦落選の衝撃

MVの再生数が伸びない。

地方公演(宮城と福岡)でチケットが売れ残ってしまった。

いつの間にかネガティブな話題ばかりが日向坂46について囁かれ出す。

つい数か月前までは、櫻坂46が言われていたことだ。

一方で、櫻坂46は日本のアイドル界にはこれまでほとんど縁がなかった”海外進出”というパワーワードを手に入れ、メディアもそれを積極的に取り上げた。

櫻坂46の2度の海外ライブの実態は、日本文化や商品の展示会イベントである”Japan Expo”の日本文化を紹介するステージイベントに応募して、手弁当で参加して”海外進出”というパワーワードを手に入れたに過ぎないのだが‥‥。

日向坂46が11月8日にリリースした2ndアルバム”脈打つ感情”は、初週で14.8万枚を売り上げてオリコンランキング首位を飾った。

同アルバムのリード曲”君は0から1になれ”のセンターはキャプテン佐々木久美が務め、リード曲を含めて5曲の新曲が収録されていた。

”脈打つ感情”で日向坂が打ちだしたのが”ライブ”というコンセプトで、特設サイトによれば”日向坂46のライブのセットリストをイメージした曲順で構成”したものだ。

しかし、ただライブ音源を並べただけでは”コンセプト”とは呼べない。

そしてアルバムリード曲がいまひとつインパクトに欠けている印象が強い。

”君は0から1になれ”は熱血系応援ソングとしての”誰よりも高く跳べ！”の2番煎じだとまで言う人もいる。

10thシングル”Am I ready?”で表題曲としてもMVとしても新しいチャレンジをしようとしたあとだけに、残念だ。

佐々木久美は貧乏くじを引いてしまった。

かくして、右肩上がりの櫻坂46vs右肩下がりの日向坂46というわかりやすい構図ができあがってしまったのだ。

その結果、2023年の総括である第74回紅白歌合戦に櫻坂46は奇跡の復活出場を果たし、日向坂46はデビュー以来続けてきた連続出場記録が途絶えてしまったのだ。

これには日向坂46の多くのメンバーが思う事があったようで、発表当日にメンバーの約3分の1となる11人が
相次いでブログを更新して紅白落選に付いて言及した。

主なブログの内容は
”応援してくれたのに紅白に出られなかった事に対しての謝罪と反省”や”今の気持ちとこれからの意気込み”を綴った。

紅白連続出場を期待していたファンへの謝罪や紅白への熱い思いはストレートに伝わってきた。

だが、何人かのメンバーが今年の紅白落選は、仕方がないことと納得していることに驚かされた。

▼佐々木久美ブログ
タイトル：返歌

▼金村美玖ブログ
タイトル：いつもありがとうございます

▼松田好花ブログ
タイトル：日向坂

▼森本茉莉ブログ
タイトル：これからの

日向坂ファンの中でも今回の紅白の落選に理解を示している人がいるし、メンバーですら結果を受け入れているように、最近の日向坂46の活動に”閉塞感”や”停滞感”や”迷い”や”憂い”があるように見えるのも事実だろう。

紅白サイドも、数多いるアーティストを差し置いて、3つの坂道グループの全てを紅白に出演させるためには、それぞれに絶対的な実績や話題性やインパクトというものが必要で、今年の日向坂46にはそれがなかったのだ。

だが、櫻坂46と日向坂46の関係は、表面上見えているほど逆転しているわけではない。

櫻坂46の2023年は薄氷を踏むような勝利だったし、日向坂46のリベンジは間違いなくやってくる。

日向坂46のリベンジの鍵は、”遅れてきた4期生たち”

停滞する日向坂46がブレークスルーを果たすには何が必要か？

多分そのカギを握っているのは、ニューカマーの4期生たちだ。

日向坂46の4期生12名は、2023年3月から始まったオーディションを経て、2023年9月に御披露目された。

乃木坂46の5期生から遅れること1年7カ月、櫻坂46の3期生からは8カ月遅れであった。

即戦力として評価が高い乃木坂5期生は、32ndシングルの選抜メンバーに5人が抜擢され、33rdでは5期生のエース井上和がセンターに抜擢され、6人が選抜入り、34thでは7人が選抜入りして、今や5期生は3期・4期と並ぶ戦力となっている。

櫻坂46でも、10月18日リリースの7thシングル”承認欲求”で、いきなりフロントに2名、3列目に2名の合計4名が選抜入りを果たし、話題となった。

元々ダンススキルが高いと評判の3期生が、森田ひかるや山﨑天らとどんな化学反応を起こすのか、ファンは期待を込めて見守っている。

遅れてきた新戦力の日向坂46の4期生は、11月3日から始まった”新参者”公演でのパフォーマンスの評判が高い。

櫻坂3期、乃木坂5期と比べても遜色のない12名が、早く日向坂46の本体に合流するのをおひさまたちは心待ちにしている。

11thシングルに4期生が参加して、日向坂46にも選抜制が導入されれば、否応なく新しい風が吹くことになる。

日向坂46にとってそれは痛みを伴う変化だろうが、それを恐れるわけにはいかない。

本格的に4期生が参加した新たな日向坂46の姿を早く見てみたいものだ。

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susumu2009.xsrv.jp

2023.11.22

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