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平手友梨奈story#2″反逆のカリスマが駆け抜けた1,616日”~圧倒的な才能に打ちのめされて、打ちひしがれるメンバーたち~

アイドル

2020年1月23日に突然欅坂46を脱退することを発表した平手友梨奈。
稀代のアイドル平手友梨奈が欅坂46のセンターとして過ごした4年半をを振り返って、”平手友梨奈story反逆のカリスマが駆け抜けた1,616日”として記憶と記録に残しておきたいと思う
本稿はその第2回(全3回)である。

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映画響-HIBIKI-の撮影現場は、平手にとって最後の幸せな現場となった。そして慢性的な平手不足によって、ファンによる平手友梨奈のカリスマ視や神格化が加速し始める

2018年1月15日に年末の紅白歌合戦での負傷についての発表があって以来、まったく音沙汰がなくなってしまった平手友梨奈。

それから半月余りたった2月7日に、自身がイメージキャラクターを務めることとなった24h cosmeの新CM発表会に登場してファンを驚かせる。

その後、再びファンの前から姿を消してしまった。

平手が初出演にして初主演した映画響-HIBIKI-の撮影に入ったことがわかったのは、それからずいぶん経った頃である。

映画響-HIBIKI-について発表が遅れたのは、平手がこの映画の出演について最後まで迷っていたからである。

(平手)演技って嘘をつく感じがして嫌です。今まで平手友梨奈として嘘をつかずに活動してきたものが台無しになってしまうのではないかと思うと不安なんです。(中略)演技ってなんですか?

この根源的な問いを平手友梨奈から投げかけられた監督の月川翔は、”響が生まれてからと同じ時間を平手さんが生きることはできないけれど、響がどう生きてきて、どう行動する子だろうと想像して表現することが演技なんじゃないか。そうやって響を演じることに嘘はないんじゃないか”と答えたという。
そして、”2回目に会ったときの最後に『監督は、最後まで向き合あってくれますか』と言われたんです。それまで全然目を合わせなかったのに、そのときだけこちらを見てハッキリと。あ、この人に嘘はつけないなと思いながら、覚悟を持って『もちろんです』と答えました”
とも語った。

クランクインは作家・鬼島仁役の北村有起哉を蹴るシーンだったが、平手は先輩俳優に全く臆することなく初シーンをこなし、実は同日が誕生日だった北村は「とても嬉しいバースデイプレゼントになりました」と笑って帰っていった。

また、響の担当編集者・花井ふみ役の北川景子と平手との息も初日からぴったりと合い、そのあとに撮影されたゴスロリファッションのシーンの撮影後には北川から「平手さんのファンになっちゃいました」とのメールが月川の元に送られてきた。

クランクアップはドローンを使っての撮影だった。
ほとんどのスタッフの作業が終了していたにも関わらず、みなが残って平手のクランクアップを見届け、平手も「まだ響でいたい」と涙を見せた。彼女自身がチームとともに響と「最後まで向き合えた」ことを感じた瞬間だったのだろう。

これまでにもヒット作を手掛けてきた月川監督だが、『響-HIBIKI-』という作品、そして平手友梨奈に出会い、「僕はお客さんが何を求めているのかというところに向かって作品を作ることが多かったけれど、今回は、この作品はどうあるべきかということだけに集中して作れた。毎回このやり方を通すのは大変だけれど、モノづくりの原点に立ち返れた感じがあります」とこの作品を総括した。

映画の現場というのは、同じ時間を何度も演じなければいけない。そうするとだんだん新鮮さが失われがちです。でも平手さんの場合は、カットがかかって、またここからスタートしますとなると、タイムリープしたかのように、またその時間を生き直すんです。北川さんや小栗(旬)さんのように安定したお芝居の方が相手だと、何度やっても同じように芝居をするし、高校生パートのようにテイクによってお芝居が変わる場合は、それに合わせて彼女の演技も変わる。すーっとそれができる。役者としての素質は十分にあると思います。技術で役をこなすということはしないと思うので、彼女が納得できる役ならば、またすごい力を発揮すると思います。と平手の俳優としての非凡な資質を語った。

2018年3月7日、平手の活動休止状態が続いたまま、6thシングル”ガラスを割れ!”がリリースされた。

▼ガラスを割れ!

4月6日~8日の欅坂46 2nd YEAR ANNIVERSARY LIVE(武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ)も平手友梨奈不在のまま開催された。

このころから慢性的な平手友梨奈不足に陥った平手の熱狂的ファンは、平手の目撃情報に一喜一憂するようになっていく。

毎月3週目だけ出演するラジオ番組”平手友梨奈のGIRLS LOCKS!”で、平手の無事を確認してやっと安心する。

そういう状況の中で、熱狂的な平手友梨奈ファンは、平手を過剰にカリスマ視し、平手の存在を神格化するようになっていく。

平手が笑った。

平手がお辞儀をした。

そんな事が話題になり、平手ファンは平手友梨奈一神教の信者だと揶揄されることも多くなった。

平手の才能を高く評価する芸能人は多かったが、その一人である”おぎやはぎ”の矢作兼は、

平手友梨奈は凄いけれど、平手友梨奈ファンは気持ち悪い。

と平手友梨奈ファンの熱狂ぶりを批判している。

平手の圧倒的な才能が引き起こした副作用を示すエピソードである。

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平手が提案した欅共和国、ストーリー性のある演出にこだわった2018年のライブは欅坂46のパフォーマンスの一つの頂点を示す記念碑的作品となった

平手の圧倒的な才能に引っ張られて、瞬く間にアイドルグループの頂点まで駆け上がった欅坂46。

自分たちがその位置にいられるのは、紛れもなく平手友梨奈のお陰であることをメンバー全員が認識していた。

自分たちはなかなか名前を覚えてもらえない存在で、”平手友梨奈と愉快な仲間たち”などと揶揄されていることもわかっていた。

だから平手友梨奈が不在の間に、ファンを落胆させないように、精一杯の努力をして、留守を守ろうとしていた。

平手友梨奈不在で行われた2nd YEAR ANNIVERSARY LIVE(2018年4月)は、チケット発売開始後すぐにSOLD OUTとなった。

平手友梨奈の代理センターには、今泉佑唯、小林由依、渡邊理佐、菅井友香、土生瑞穂、鈴本美愉、守屋茜の7人が代わる代わる務めた。

長濱ねるはソロ曲とユニット曲で観客を魅了した。

彼女たちの渾身のパフォーマンスは、一定の評価を受けたが、平手の評価には遠く及ばなかった。

メンバーは、自分たちが欅坂46のメンバーであることにどんな意味があるのかという根源的な問題に直面させられていく。

映画がクランクアップして平手はやっとメンバーに合流し、欅坂46の活動に復帰することになった。

平手友梨奈復帰後の最初のライブ、欅共和国2018(7月20日~22日、コニファーフォレスト)は大成功し、欅坂46のパフォーマンスの歴史の中で一つの頂点を示すものとなった。


2017年4月に第1回が開催された欅共和国、そのコンセプトを提案したのは平手友梨奈である。

平手は、2017年4月の『欅坂46 デビュー1周年記念ライブ』のセットリストに納得がいかずライブの直後に号泣していた。

それ以降平手は自分から演出やセットリストに積極的にアイデアを出すようになったのである。

平手のアイデアに乗って、メンバーとスタッフの新しいイベントを作りたいという思いが集結したのが、欅共和国でした。(今野義雄談、日経エンタテイメント2018年5月号)

テーマやコンセプトにあったストーリーがあるライブにしたいという想いから、『欅共和国』という国にゲストである欅坂46が来るというイメージで、オープニングとエンディングがひとつに繋がるショーが誕生した。

欅共和国2017が成功した要因としては、平手のイメージが忠実に具現化されたことと、練習期間が長かったことが挙げられる。

平手の言葉を借りるなら、”全部の曲のエネルギーが溜まっていたため、それが良い感じに放出されてひとつにまとまった。”からだ。

しかし、その直後にあった夏の欅坂46 全国ツアー2017「真っ白なものは汚したくなる」では苦戦を強いられる。

欅共和国2017の開催時にすでに発売されていたアルバム『真っ白なものは汚したくなる』の振りを覚える時間がなかったため、歯車が狂ったと語るメンバーも少なくない。

メンバーやスタッフが、平手の欅共和国へのこだわりに最後まで付き合ったことが、後のスケジュールに大きく影響してしまったのだ。

平手が演出に全面的にかかわった欅共和国2017は、2日間で延べ2万5千人を、欅共和国2018では、3日間で延べ4万5千人の観客を熱狂させ、大成功の裡に幕を閉じ伝説となった。

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平手友梨奈が絶賛される陰で、無力感に打ちひしがれるメンバーたち

長濱ねるは、その愛らしいルックスと聡明さで平手に次ぐ人気メンバーであった。

長濱のそういう佇まいは、平手によって導かれた欅坂46の路線とは異質のものだったが、運営はねるの魅力を最大限に活かすことで、欅坂46の多様性(ダイバーシティ)を打ち出す戦略をとる。

長濱は1stシングルで、ユニット曲”遅れてきたバス”のセンターに抜擢され、2ndシングルでは”また会ってください”というソロ曲が与えられた。

これもまた破格の扱いであった。


TVのクイズ番組やバラエティ番組に最初に呼ばれるのはいつも長濱ねるであった。

グループ初のソロ写真集も長濱ねるが抜擢され、その作品”ここから”は、初週で約10万部を売り上げると言う快挙を達成した。

しかし一方で、長濱のパフォーマンススキルがあまり高くないことを批判したり、その言動を”ぶりっ子過ぎてあざとい”とか”腹黒い”とか批判するアンチが増殖していく。

その多くは、欅坂46の笑わないアイドル路線に自らの心情を重ねる熱狂的な欅フリークであり平手フリークたちであった。

長濱は自らを”八方美人”と自虐するほどの”気にしい”である。

故郷の長崎で評判の美少女だったねるは、目立つことが好きだったこともあって、いじめの格好の標的になってしまう。

親の反対を押し切って欅坂のオーディションに応募したのは、合格して早く故郷の長崎を出たかったからだ。

ねるにとって、田舎の”出る杭は打つ”風土は耐え難いものだったのだ。

母親、、ねるがアイドルになることに猛反対したのは、上京して一人ぼっちになったねる、、長崎にいる時と同じようには守ってやれないと思ったからだ。

ねるは家族の中では末っ子で、みんなから愛されて育ってきた。

褒められるのが大好きで、打たれ弱い女の子だった。

”気にしい”である我が子は、アイドルになったら長崎にいた時よりももっとひどい批判にさらされてしまうだろう。

東京と長崎に離れていたら、家族に甘えさせることもできず、ねるを守ってやることもできない。

ねるはそんな状況にはきっと耐えられないと母親は考えて、アイドルになることに反対したのである。

欅坂46の一員となったねるはすぐに人気者となり、運営からの期待も高く、そのアイドル人生は順風満帆のように見えた。

しかし、ねるの内実は心穏やかではなく、メンバーを気にし、ファンからの批判を必要以上に気にしてしまう。

自分は最終審査を受けず、裏口入学のようにグループに加入した。

そのことが澱のようにねるの心に沈殿していた。

ダンスや歌というアイドルにとっての基本的なスキルが足りていないこともねるの大きな悩みであった。

そして、ねるに偏るバラエティ番組出演や、ソロ曲やユニット曲での特別扱いなどがアンチのバッシングの標的になっていることも知っていた。

いっぽうで、なかなか成果が上がらないダンスのレッスンやボイトレは長濱の性に合わなかった。

ねるは目立つことは好きだったが、地道に努力することはあまり好きではなかったのだ。

ねるの心は今にも折れそうであった。

母親の予想は的中したのだ。

2017年夏の欅坂46 全国ツアー2017「真っ白なものは汚したくなる」での最初の神戸公演では8月2日と3日の2日間共、平手が体調不良で途中退場してしまう。

その後復帰したものの、平手は俯いたままでの無気力なパフォーマンスを繰り返してしまう。

そしてついに8月16日の名古屋公演を欠場するという最悪の事態を迎える。

平手の不調はツアーの間ずっと続いた。

そんな中、メンバーは平手不在の大きな穴を埋めるべく、全身全霊でライブパフォーマンスと向き合った。

長濱もその一人で、”2017年の夏のツアーのMVPは長濱ねるだ”という声も多かった。

ところがそんな賞賛の声は、平手友梨奈のたった一度の渾身のパフォーマンスで消し去られてしまった。

このツアーのファイナルとなる幕張公演の最終日に披露された自分の棺から不協和音に繋がるWアンコールでの平手の圧巻のパフォーマンスは観客を興奮のるつぼに叩き込んだ。

平手の本気は本当に凄い。

すべてをねじ伏せてしまう圧倒的なパフォーマンスなのだ。

この時長濱ねるは自身のアイドルとしての限界を感じ、初めて卒業を意識した。

そう感じたのは長濱だけではなかった。

いくら頑張っても平手の穴を埋めることはできない。

欅坂46は、多くのメンバーが”自分は欅坂46に何も貢献できていない。”と感じているという異常な状況に陥っていた。

メンバーたちは無力感に打ちひしがれてしまった。

平手友梨奈story #3 へ続く

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