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多部未華子主演ドラマ”これは経費で落ちません”が面白い

テレビドラマ

2019年7月27日から放送が開始されたNHKドラマ10”これは経費で落ちません”が期待以上に面白く、夏の連続ドラマとして思わぬ収穫であった。

原作は、ジュブナイル小説家の青木祐子が、初めて現代を舞台にある企業の経理部に勤務するOLを主人公に、彼女の元に持ち込まれる膨大な領収書から見える、様々な人間模様や、企業が抱える問題をコミカルに、時にシニカルに描いた連作小説である。

2016年に始まったこのシリーズは2019年7月現在で第6シリーズが連載中の人気シリーズとなっている。

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刑事もの、科捜研ものなど犯罪をテーマに据えたドラマばかりが視聴率上位を独占している現在のドラマ界の中で、視聴率の呪縛から比較的自由であるNHKが、かろうじてテレビドラマの多様性や、可能性を広げる役割を果たしている。

本作は、ごく普通の石鹸メーカーが舞台で、主人公は経理部に勤務するアラサーの独身OLという設定である。

殺人も起こらず、死体が出現するでもない、経理部の日常の中で、持ち込まれた1枚の領収書を軸にストーリーが展開していく。

平凡な民間企業の日常に焦点を当てたコメディドラマであるが、これが滅法面白いのだ。

それは、主人公の造形がしっかりできていることと、主演の多部未華子の手堅い演技がそれをさらに膨らませているからである。

NHKドラマ10のスタッフと多部のコラボは、実はこれが2作目である。

2017年4月に同枠で放送されたツバキ文具店〜鎌倉代書屋物語〜も秀作であった。


小川糸著の同名人気小説を実写化したドラマで、多部は主人公・雨宮鳩子を演じた。

鳩子がケンカ別れした祖母(演:倍賞美津子)の死をきっかけに、8年ぶりに鎌倉へ帰省し、祖母の後を継いで“代書屋=ツバキ文具店”を営む物語。依頼主が心の奥底に抱く思いを伝える代書の仕事や、文具店に集まる風変わりな人々とのふれあいを通して小さな幸せを見つけ、ゆっくりと成長していく様子を、多部は持ち前の演技力で静やかながら魅力的に演じ切った。

木村隆志氏(コラムニスト・コンサルタント)は、〝多部さんくらいの歳でこの作品に溶け込める女優はそうそういない”とその資質を高く評価している。

多部はこの作品で第8回コンフィデンスアワード・ドラマ賞 主演女優賞を受賞した。

多部の受賞コメント

主演女優賞ありがとうございます。大変光栄です。『ツバキ文具店~鎌倉代書屋物語~』は、それぞれに悩みを抱えた登場人物たちが周囲の人たちに支えられながら生きていく物語。主人公の鳩子もその中で少しずつ成長していきました。大きな事件は起きませんが、淡々とした中に人間ドラマが描かれていて、その世界観にとても共感しましたし、鳩子が相手のことを思いながら便箋や封筒を選ぶのも素敵だなと思いました。この作品で賞をいただくことができてとても嬉しいです。 

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13歳で女優デビューした多部は、アイドル女優から見事な演技派女優に生まれ変わり、いつしか30歳になっている。

多部への出演オファーは多いのだろうが、出演作品をかなり絞っている印象がある。

良いマネジメントスタッフに恵まれているのと同時に、多部自身が作品と真摯に向き合っている結果であろう。

女優多部未華子が、これからどんな作品で、どんな人生を演じてくれるか楽しみである。

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