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坂道グループの”今そこにある危機”、未来は霧の中に隠れたままでまだ見えない!~危機管理能力の欠如で停滞する世代交代~

アイドル

アイドルグループの人気を維持することの難しさ~混迷を深める坂道グループの世代交代~

アイドルグループの運営方法は大きく2つに分かれている。

一つは、グループのメンバーを固定したままで、”デビューから解散するまで”という”アイドルグループの一生”をファンと共に生きようとする、古くからある方式である。

ジャニーズ事務所の”嵐”がこの方式の代表で、女性アイドルグループでは、ももいろクローバーゼットやPerfumeがこの方式を採用している。

この方式はプロダクションの企業規模を問わないので、古くからの芸能事務所では、この方式を採用していることが多い。

もう1つは、秋元康率いる”AKB・坂道グループ”で採用されている方式で、”メンバーの世代交代を繰り返してグループを長期に渡って持続させていこうとするものだ。

モーニング娘。などを擁するハロプログループもこの方式を採用している。

ここ最近は、秋元方式を採用するプロダクションも増えているが、グループを瞬間的にヒットさせるだけでも大変なことであるのに、さらにメンバーの世代交代を図ってグループの人気を長期間持続させることは至難の技だ。

今や百億円以上を売り上げるビッグビジネスとなった秋元康総合プロデューサー率いる乃木坂46・日向坂46・櫻坂46を擁する坂道グループは、そういう中でかろうじて成功例として挙げることができ、現にSONYの中では最大の収益の柱となっている。

アイドルグループのメンバーの”旬”は短い。

ゆえに坂道グループは、定期的にオーディションを行って、メンバーを持続的に世代交代させていかなければならないという宿命を負っている。

長期間安定的にグループを経営するために避けて通れない道である。

乃木坂46の結成から10年を経た現在、3つの坂道グループの世代交代は決してうまくいっているようには見えない。

アイドルグループの人気を長期間にわたって維持し続けることはそれほど難しい。

秋元康総合プロデューサーとSME(ソニーミュージックエンタテインメント・以降SONYと呼ぶ)

この記事では、坂道グループが現在直面している危機について考えてみたい。

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坂道グループにおける最大のリスクは、秋元康総合プロデューサーにある

身も蓋もなく言ってしまえば、坂道グループが構造的に抱えている最大のリスクは、秋元康総合プロデューサーの心身の健康問題である。

1958年〈昭和33年〉5月2日生まれの秋元康氏は、現在63歳(2022年3月時点)だ。

一般企業なら後2年で定年を迎える年齢である。

秋元氏は、高校生時代から放送作家としてこの業界で働き始めて以来46年間あまりエンターテインメント界のトップランナーとして走り続けてきた。

60代を迎えても、その旺盛な好奇心と創作意欲は衰え知らずで、予定調和を嫌う作風は常に新しいプロジェクトや創作物を生み出し続けている。

そのクリエイティブマインドが、急に衰えるとは思えないが、60代の彼に健康上の不安が全くないとは言い切れない。

1日3時間ほどのショートスリーパーである秋元氏には、外面からではうかがいしれない勤続疲労が溜まっている可能性があり、それはいつ表面化してもおかしくはない。

秋元康総合プロデューサーの才能の恩恵を最大に受け取っているSONYは、もちろんそのことを良くわかっているが、それに対するリスクヘッジやリスクマネジメントを積み重ねているとは思えない。

それは、秋元康総合プロデューサーの才能が、代替の効かない唯一無二のものであることをわかっているからである。

もし秋元康氏が、何らかの病に倒れれば、外部の多くのクリエイターをかき集めて、坂道グループの楽曲やパフォーマンスレベルの維持を図るだろうが、おそらくそれは成功しない。

百億以上の売り上げを誇る坂道ビジネスをそのまま維持することはできず、ハロプログループ並みの十億程度のビジネスにスケールダウンしてしまうことは目に見えている。

厳しいようだが、それが”坂道グループから秋元康総合プロデューサーがいなくなる”ことで予想される結末である。

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坂道グループと秋元康総合プロデューサーとSONYと今野義男氏との特殊な関係

アイドルグループ乃木坂46・日向坂46・櫻坂46のメンバーは、SONYグループのSME(ソニーミュージックエンタテインメント)の100%子会社である乃木坂46合同会社SEED&FLOWER合同会社という芸能プロダクションに所属している。

秋元康氏は、乃木坂46合同会社とSEED&FLOWER合同会社から、それぞれのグループのプロデュースを委嘱されて、独占的に作品を提供し、プロデュース全般を行っている。

今野義男氏は、乃木坂46合同会社とSEED&FLOWER合同会社の両社

当時SONYに心理的な”借り”があった秋元氏が、その借りを返すべく、人気絶頂だったAKB48に匹敵するようなアイドルグループ(後の乃木坂46)を作る合同プロジェクトを立ち上げる。

そのあたりの経緯についてはこちらの記事を参照されたい。

SONYが乃木坂46を手掛けた理由~AKB48の借りを乃木坂46で返した秋元康~
SONYグループとAKB48の因縁~2億超の負債を抱えてAKB48からの撤退を余儀なくされたSONYグループ~ 多額の負債を抱えたままAKB48プロジェクトからの撤退を余儀なくされたSONYグループ 2005年7月、会いに行けるアイドルをコ...

そのプロジェクトで、秋元氏に対応するSONY側のカウンタ―パートとして登場したのが当時ソニーレコードの制作部長だった今野義男氏である。

今野氏は乃木坂46の1期生オーディション段階から、現場の責任者として参加した。

AKB48と差別化を図ることが、新グループにとって必須であり、そのコンセプトを秋元康総合プロデューサーは、”AKB48の公式ライバル”と位置づけていた。

それを実現すべく現場の責任者として奮闘したのが今野義男氏であった。

一方で、すべての最終決定権はプロジェクトの総合プロデューサーである秋元康氏に委ねられていた。

今野氏が決めた全ての事項は、プロジェクトの会議で秋元康総合プロデューサーに報告され、秋元康総合プロデューサーの了解を得ることが必要だったのである。

多くの場合今野氏の方針は秋元氏の同意を得られたが、時折秋元氏から手ひどく批判されて、作業のやり直しを命じられることもしばしばであった。

▼秋元氏から乃木坂46のMVの撮り直しを命じられる今野氏

この動画では秋元氏は今野氏を”お前”と呼び、今野氏は秋元氏を”先生”と呼んでいる。

その後10年以上にわたって、今野氏は秋元康総合プロデューサーの意向を100%実現するべく奮闘してきたのだが、この関係性は現在に至るまでいささかも変わってはいない。

SONYにおける坂道グループの最高責任者である今野義雄氏に、残念ながらクリエイティブな才能や危機管理能力はほとんどない。

秋元氏が、今野氏の忠誠ぶりを高く評価して、坂道に関することは今野氏以外とは話さないと決めているだけのことだ。

欅坂46の幻の9thシングルで、今野氏が目論んだ選抜制の導入を、秋元氏は一度は了解しておきながら、平手友梨奈からの直訴を受けてあっさりとひっくり返した。

今野氏の面目は丸つぶれとなり、今野氏は欅坂46メンバーからの信頼と尊敬を失ってしまう。

両者の信頼関係が崩壊してしまったことが引き金となって欅坂46は改名を余儀なくされてしまった。

この出来事は、今野氏に対する秋元康総合プロデューサーの評価が極めて低く、今野氏の面子など気にもかけていないことを示すエピソードである。

坂道グループでは、メンバーについての様々なトラブルや不祥事が起きてきたが、SONY側の責任者である今野氏がその責任を問われて更迭されることはなかった。

それは秋元氏が彼を守ってきたからである。

今野氏にその責任を取らせれば、これまで長い時間をかけて作って来た”今野氏と秋元氏との両者にとって都合の良い関係”は終ってしまう。

そして今野氏の代わりの新しい誰かが秋元氏の担当になり、秋元氏はもう一度今野氏と同じような関係をゼロから築いていかなければならない。

秋元氏はそんな時間は無駄だし、もったいないと思っている。

SONYにとって、秋元康総合プロデューサーの意向は絶対であり、反論する余地などまったくない。

たとえば、締め切りを守らない秋元康総合プロデューサーの制作習慣も無条件に受け入れる。

製作過程での朝令暮改は日常茶飯事である。

一方で、秋元氏は坂道グループについては今野氏以外とは話をしないと決めている。

そのことはSONY側にしてみれば、秋元康総合プロデューサーと話ができるのは今野氏だけということになる。

結果として、SONYは今野氏を秋元康総合プロデューサー担当から外すわけにはいかないのだ。

秋元康総合プロデューサーは、今野氏がどんなミスをしても、危機管理能力に欠けていても、叱責はするが、”辞めろ!”とは言わない。

その代わり、”俺の言うことをしっかり聴いて、それを実行するだけでいい”。

身も蓋もない言い方をしてしまえば、”伝達係”でいてくれればいいと思っているのである。

SONYの幹部たちもそのことをよく理解していて、”傍若無人で予測不能な秋元康総合プロデューサー”担当は、今野氏に丸投げして置けば良いと考えているのだ。

かくして今野氏のSONYにおけるポジションは安泰である。

”虎の威を借るキツネ”ならぬ、”秋元康総合プロデューサーの威を借る今野氏”がそこに存在している。

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応募者数に頼っているオーディションの限界

いかに秋元康総合プロデューサーが天才であっても、新しいアイドルの発掘にまで手はまわらない。

坂道グループの”新メンバーの発掘”=”オーディションの実施”は、SONY(さらに言えば今野氏)に任さざるをえない。

グループの人気を背景に、SONYが実施する坂道グループのオーディションは無類の強さを誇り、多数の応募者を集めることに成功している。

直近では乃木坂46の5期生オーディションに単独グループでは史上最多となる87,852人の応募者を集めた。

オーディションのクオリティの高さ、それがSONYが持っている最大のアドバンテージである。

秋元氏の才能SONYのオーディションのノウハウ、この二つが両輪となって坂道グループの人気が維持されているのだ。

だが同時にそれは坂道グループのアキレス腱でもある。

史上最大の応募者を集めながら危機管理に失敗してしまった乃木坂46 5期生オーディション

オーディションという新人発掘の方式は、エンターテインメントビジネスの隅々にまで浸透している。

毎日、どこかで何かしらのオーディションが行なわれていると言っても過言ではない。

アイドルに限らず、モデルや俳優など様々な分野の新しい才能を見出そうと、大小さまざまなオーディションが行なわれているのだ。

それぞれの主催団体が自社の情報網を駆使して、全国津々浦々から有力な応募者を集めている。

大手の芸能事務所は、専任のスカウト担当者を置いて、日常的に全国から情報を集めている。

そういう中で坂道グループのオーディションも行われている。

オーディションの成功の最大の鍵は、応募者の質である。

応募者が少数精鋭であればそれに越したことはないが、それは事実上不可能である。

多人数を集めて、応募者ピラミッドを大きくすれば、その頂点は高くなる(はず)という論理に頼って、応募人数を増やすことに力を集中することになる。

直近で行われた乃木坂46の5期生オーディションでは、友達同士での応募を推奨したりして、応募人数を増やす工夫をした。

その結果、単独グループのアイドルオーディションでは史上最多となる8万7,852人を集めたとSONYは発表している。

このオーディションでは11人の5期生が誕生したが、お披露目の過程の拙さでファンの反発を招き、中西アルノと岡本姫奈の2人が活動自粛に追い込まれるという前代未聞の醜態を演じてしまった。

その原因はここでは論じないが、オーディションの運営の難しさと運営(SONY)の危機管理能力の欠如だけが際立つこととなった。

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アイドルオーディション応募の最大の動機は、グループやメンバーに対する憧れ

現役の坂道メンバーの多くが、オーディションの応募動機について、グループやメンバーへに対する憧れだったと答えている。

グループやメンバーの人気と応募人数の相関関係はかなり髙い。

2010年代前半まで圧倒的な人気を誇り、国民的アイドルグループだったAKB48。

それが2014年をピークに、人気が下降に転じる。

それに引っ張られるように、AKB48のオーディション応募者の量と質が低下し始める。

一方で、AKB48との差別化を目指し、徹底的にビジュアルとスタイルにこだわった乃木坂46は、次第にファンの認知を獲得し始め、ついにAKB48を凌駕するまでになっていく。

2016年乃木坂46の16thシングル”サヨナラの意味”がグループ初のミリオンセールスを達成したころには、両者の関係は完全に逆転してしまった。

AKB48より乃木坂46に憧れる女性が多くなり、乃木坂46のオーディションに集まる応募者のレベルはどんどん高くなっていったのである。

その結果AKB48には優秀な人材が集まりにくくなり、さらに人気が下降するという”負のスパイラル”にはまりこんでいく。

AKB48は今もそこから抜け出せていない。

人気があるグループのオーディションには質の高い応募者が多数集まるという、極めて当たり前で残酷な原則が存在している。

坂道グループメンバーの現状の年齢構成

現役坂道G全メンバー年齢順(2022年4月現在)

乃木坂46の年齢構成(2022年4月現在)とセンター候補

乃木坂46の在籍メンバーは44名(5期生11人を含む)で、そのうちの20名(5期生9名)が10代だ。

日向坂46では、全22名中で10代は6名いる。

だが櫻坂46では、22名中10代は2名しかいない。

乃木坂46の現メンバーの中ですでにセンターを経験しているのは、齋藤飛鳥(23歳・2022年4月現在)・山下美月(22歳)・与田祐希(21歳)・賀喜遥香(20歳)・遠藤さくら(20歳)・中西アルノ(19歳)の6人である。

人気面から見て、今後センターを担えそうなのは、3期生では久保史緒里(20歳)・梅澤美波(22歳)の2人、4期生では早川聖来(21歳)、柴田柚菜(19歳)、筒井あやめ(17歳)といったところで、5期生はまだ未知数である。

乃木坂46は、5期生オーディションが済んだばかりで、メンバーの年齢構成は最も健全だが、乃木坂46の未来を担う10代メンバーの資質がそれに伴っているのかはまだ定かではない。

失敗に終ってしまったが、運営は29thセンター中西アルノに大きな期待を掛けていた。

中西アルノ以外の5期生に期待がかかる所以である。

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日向坂46の年齢構成(2022年4月現在)とセンター候補

日向坂46は、現在4期生オーディションの真っただ中で、その結果が出るのは8月の予定である。

10代の4期生が10人程度加入すれば、年齢構成は格段に好転する。

これまで表題曲(アルバムを含む)のセンターを担ってきたのは、小坂菜緒(19歳)、加藤史帆(24歳)、佐々木美玲(22歳)、金村美玖(19歳)の4人。

この4人以外のセンター候補の筆頭だった渡邉美穂(22歳)が卒業を発表してしまったので、残る候補は上村ひなの(18歳)しか見当たらない。

4期生オーディションの結果に期待がかかっている。

4期生の参加で、全員選抜制が維持されるのかどうかも注目されるところだ。

櫻坂46の年齢構成(2022年4月現在)とセンター候補

現状の年齢構成で一番問題があるのが、全メンバー中10代が2名しかいない櫻坂46である。

その原因は欅坂46の結成にまで遡る。

元々、欅坂46の1期生オーディションのレベルが低く、22名しか合格者を出せなかったことが現在まで尾を引いているのだ。

運営は早くから欅坂46に選抜制を導入して、グループ全体のレベルアップを図ろうと考えていたが、平手友梨奈1強体制の歪(ひずみ)が運営とメンバーの信頼関係を崩壊させたことで、これまでメンバーの世代交代に手を付けられずにいるのだ。

櫻坂46では、1期生の人気メンバーは小林由依、菅井友香を除いてほとんどが卒業(または脱退)してしまった。

現在、活動の主力は、すでにセンターを経験している森田ひかる(20歳)、田村保乃(23歳)、山﨑天(16歳)らの2期生に移ったが、グループのブレークスルーを実現するほどのパワーはない。

その他にセンター候補として挙げられるのは小林由依(22歳)くらいのものだろう。

櫻坂46にとって、起爆剤となる10代の新メンバーの加入が喫緊の課題だが、櫻坂46の3期生オーディションの開始は、どんなに早くとも2022年秋以降になる。

そして、乃木坂5期生オーディション、日向坂4期生オーディションが終った直後に行われる櫻坂46の3期生オーディションは、出涸らしのお茶のようなもので、どう考えても見通しは明るくない。

櫻坂46の苦難の道は、まだまだ続いていくだろう。

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坂道グループの未来は霧の中に包まれたままだ

これまで見てきたように、アイドルグループの人気を長期にわたって維持することは至難の技である。

グループに新たな戦力を加えるためのオーディションは、さらに激しい競争の只中にある。

その中で運営が考えるべきは、自家製のファーム作りであろう。

オーディションではなく、日常的なスカウト活動を充実させて、人材の青田刈りを図り、才能を育てていく。

そのためのファーム(育成組織)を作ることは、手間と時間とコストがかかる方法ではあるが、回り道のようで一番の早道であるように思える。

坂道の未来はまだ霧の中に包まれていて見通すことができない。

コメント

  1. あっちゃん より:

    近年の乃木坂は徐々に力を落としており、更に人気メンバーの卒業・離脱による戦力低下が大きい